エロスの極みと救済
投稿者:桃ゼリー 追加日:2020/09/08
収録された二篇の短編ともに、十分に共感できる秀作だった。今回も村山恭助監督が追求しているのは、極めつきのエロスによって、不遇に落ちた熟女を救済することだろう。まず、評価しておこう。主演の宮島優嬢と内原美智子嬢は、監督の意図に従って、演出通りによく好演した。想定では、一方は10年以上の空閨をかこち、一粒種の息子を抱えながら土方作業で生計をたてる貧しい未亡人、他方は愛娘を失って以降、妻のパート代すら盗み取っていくダメ亭主によって困窮、5年以上も空閨を続ける主婦。いずれも辛酸を舐める不幸な女たちだ。さて作中、女の空閨が密やかに放つ淫靡な匂いに肉欲が刺激され、熟れたメス肉に食らいつく男たちは、一方は少年野球の監督、他方は百科事典のセールスマン。財力や地位がある訳でもない、しがないオスたち。しかし不遇の女への同情心が厚い点は共通しており、女たちは、長年の空閨を破られる情交の絶頂に啼きながら、日頃の切ない思いが救済されていく。先のレビューで記したが、人間肯定とエロス賛歌路線のレーベルの下で、名もない市井の善男善女の幸せな情交を、あくまで熱く&エロく描いていく村山監督の爽やかな志には、拍手喝采を送りたい。